良好胚を移植しても流産は起こりうる。その原因は胚の染色体異常に起因していることが大多数である。受精卵の形態が如何に綺麗であろうとも、通常の顕微鏡観察で細胞内の染色体の正常性を判定することはできない。
これまではFISHという方法で胚の染色体異常を検出し、着床前診断(PGS)が行われていた。しかし、FISHは手技的に、また検出の限界から見て必ずしもPGSに適した方法ではないことから広く使用されるまでに至らなかった。ところが、アレイCGHという方法が開発されたことにより、全ての染色体数を正確に検出することが可能となってきた。流産を繰り返す患者さんに対して、移植前の胚の染色体数を調べて、正常な胚だけ移植する治療方法がある。胚盤胞の栄養外胚葉細胞2-3個を採取して検査することが可能である。これは流産予防のための胚の選別に有益な検査となりうることが分かってきている。
流産は移植胚の染色体数的異常で起こることが大多数である。しかし、現在の日本産婦人科学会では、転座保因者の染色体異常と遺伝性疾患の患者さんの検査のみ許可している。
将来、ARTに携わるエンブリオロジトは胚の染色体検査を自ら行うことがないにしても、これらの知識の習得は避けて通れない問題である。この著書は患者さんの啓発書として書かれたものであるが、アレイCGHが臨床で如何に有用であるかを知るための我々の啓発書でもあると感じた。
是非、ご一読をお勧めします。



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